SHRSP5/DmcrラットはNASHと心筋梗塞を誘発する


 Spontaneously Hypertensive Rat Stroke-Prone 5 (通称:SHRSP5/Dmcr)は、SHR等疾患モデル共同研究会より分与を受けています。本モデルは、2012年にSPF化された新規モデルであり、生来から有する高血圧症の他に、高脂肪食の給餌によって、非常にヒト病態とよく似た非アルコール性脂肪肝炎(上図(1))が確認されると同時に、げっ歯類では難しかった大動脈の脂質沈着(上図(2))および虚血性の心筋障害(上図(3))を引き起こします。これらの原因として、血清総コレステロールやLDL/HDLコレステロール比が高くなること(上図(4))、血管内皮機能が低下していること(上図(5))などが挙げられます。

 私たちはこの新規モデルSHRSP5/Dmcrモデルを使用して、非アルコール性脂肪肝炎と心血管疾患との関連について研究を行なっています。


脂肪肝と動脈硬化をつなぐ仲介因子としての胆汁酸代謝


 胆汁酸は、肝臓内の胆汁酸プールおよび腸肝循環によって一定に保たれていますが、NAFLD/NASH (脂肪肝)患者では、このバランスが壊れ、血中に漏出する胆汁酸が高くなることが知られています。この胆汁酸は、毒性の低い1次胆汁酸と腸内細菌の作用を受けて毒性が高くなった2次胆汁酸で構成されており、我々は血中に漏出した2次胆汁酸の増加が、血管内皮細胞の接着因子(ICAM-1、VCAM-1)を活性化させ、動脈硬化を発展させると考えています。